<金口木舌>明治の足尾銅山での鉱毒被害の発・・・


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 明治の足尾銅山での鉱毒被害の発生は日本で初の公害とされる。住民が国に訴える請願、衆院議員の田中正造の直訴によって窮状が広く知られるようになった

▼民による請願は大日本帝国憲法に定められていた。日本国憲法にも権利として明記された請願権を活用し、静かな空を取り戻す取り組みが宜野湾市で動きだしている
▼米軍機の住宅密集地上空の飛行を禁止する条例を制定しようと市議会に請願する運動だ。普天間第二小への窓枠落下から半年。ヘリ接近のたび、授業が中断される状況を改善したいとの思いがある
▼嘉手納基地では墜落したF15同型機が飛行を強行した。嘉手納町議会の抗議を米軍は拒み続けていて、議会は今月5本目の決議を可決した。住民の生命を守る立場から決議せざるを得ない機会が月5度あるのは異常である
▼「日本政府は要望する相手方か」。中城村議会はそんな思いで意見書を出さなかった。F15飛行再開を追認する態度には期待できないとの判断で、何も見限る訳ではない。国民を守る政府であれ、と願わざるを得ないむなしさだ
▼「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」は田中正造の言葉。沖縄では空を荒らされ、村が破られないよう知恵や権限を用いた取り組みが続く。田中の死から105年。日本は真の文明を手にしていると言えるのか。