<金口木舌>冗舌なサンゴの海の魚


この記事を書いた人 琉球新報社

 サンゴの海にすむミスジチョウチョウウオは、縄張りに他の個体が入ってくると身をていして迫ってくる。尾びれを上げてみたり、相手におなかを向けてみたりと、姿勢はさまざまだ

▼それぞれの行動には警告や威嚇、求愛の意味もあるらしい。動物行動学者のコンラート・ローレンツは、サンゴ礁の魚たちの激しい種内闘争を観察し、攻撃的行動は「悪」ではなく種を維持する働きなのだと示した
▼言葉を話さない魚たち。本当は冗舌なのかもしれない。言語で意思疎通を図る人間も、話す言葉だけではなく、表情やしぐさなど非言語コミュニケーションに頼ることが多い。「目は口ほどにものを言う」わけだ
▼きょう県知事選が告示される。候補者はそれぞれ、他との違いをさまざまな手法でアピールする。期日前投票もあるが、30日の投票日までに政策の違いをよくよく見極めたい
▼立候補予定者が論戦を戦わせる討論会が2度開かれた。怒ったような表情で早口になる、芝居がかった口調で話す、眉をひそめる、首を振る―。紙面で見る文字情報以上に、しぐさは冗舌だ
▼琉球新報は立候補予定者討論会の模様を、ユーチューブの専用チャンネルでノーカットで公開している。紙面で政策を比較した後、今度は話す言葉以外の候補者の身ぶり、手ぶりなど一挙手一投足に注目するのも、人となりを知るのに役立つはずだ。