京都の南座が約3年ぶりに再開場した。正面には歌舞伎役者の名前を書いた「まねき書き」が並ぶ。「勘亭流」という独特な筆書きで、これを見ると冬の到来を感じさせる
▼勘亭流とは違うが、学園紛争が盛んな頃は「ゲバ文字」や「全学連漢字」と呼ばれる文字が立て看板に躍っていた。マス目いっぱいの独特の字体で、「闘争」を「斗争」、「労働」を「労仂」、「職業」を「耺業」と略すのも特徴的だ
▼かつては都内でも「ゲバ文字」の立て看をよく目にした。ある大学は道路に面して威圧感のある文字が掲げられていたが、今では一掃されて見違えるほどだ。景観は良くなったものの、何だか「らしさ」がなくなった感じがしないでもない
▼京都大学が5月、サークルの勧誘やイベント告知などで大学の外壁にかけられた立て看を撤去した。京都市から屋外広告物条例違反と繰り返し指導されたためだ。設置場所を限定する新ルールを適用した。京大名物の立て看の撤去は「表現の自由を脅かす」と論争にもなっている
▼東京都の新宿区は8月、デモで使える区立公園を4カ所から1カ所に減らした。音量や交通規制で住民に配慮したというが、「デモは迷惑行為か」との議論もある
▼何とも息苦しい。立て看もデモも自分には関係ないと思っているうちに、いつか身の回りが規制だらけということにもなりかねない。