「いずくんぞ来者の今に如(し)かざるを知らんや」は論語の言葉。「これから出てくる者が自分の程度になれないとどうして言えようか」の意。前段の「後生畏(おそ)るべし」が引用されることが多い
▼若い可能性を見くびってはならないと戒める。これを地で行き、若者への厳しい言葉は愛情の裏返しだった。亡くなったジャズピアニストの前田憲男さんのこと。編曲家でもあった
▼とにかく辛口だった。学生の音楽コンテストの審査員を長年務めた。けちょんけちょんとはこのことだろう。容赦なく「ただうまいだけ」と切り捨てることもあった
▼あるとき、ジャズのビッグバンドのいい演奏はどこで聞けるか尋ねられ「学生コンテストに来て」。損はさせない、とまで言った。本人は独学でピアノを学んだ。批評の効果でもあろうが日本の学生の努力とレベルの高さは誇りだったのだろう
▼プロ野球埼玉西武の山川穂高内野手が今季のリーグ最優秀選手(MVP)に選ばれた。パ・リーグの本塁打王だ。中部商業高時代に指導した元監督の盛根一美さんによると、決まった練習メニューの後「おかわりをください」と言って、特守や特打などの練習をしていたという
▼中部商出身のチームメート、多和田真三郎投手も最多勝を獲得した。2人に共通するのは並外れた努力家だったこと。監督も「後生畏るべし」と感じていたのではないか。