<金口木舌>産まない「問題」とは


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 麻生太郎副総理兼財務相が少子高齢化に関して「子どもを産まない方が問題だ」と発言した。批判を受けて撤回したが、反省の色はうかがえない

▼麻生氏は2014年にも衆院選の応援演説で「産まないのが問題だ」と述べた。首相時代の09年には衆院予算委員会で「(わたしは)43で結婚してちゃんと子どもは2人産んだから義務は果たしたことになるのかもしれない」と述べ、批判を受けて撤回した
▼一方で政府の少子化対策は効果が上がらない。厚生労働省の推計で18年に国内で生まれた赤ちゃんは92万1千人で、3年連続で100万人を割る見通しだ。過去最少だった17年より2万5千人も減った
▼共同通信の昨年の調査で、全国66自治体で認可保育所の1次選考で落ちた0~2歳児は約3万5千人。政府は幼児教育と保育の無償化を掲げるが受け皿そのものが足りない
▼非正規労働者の割合が増え、雇用が不安定化したことも晩婚・晩産化に影響を与えているとされる。正社員との格差をなくす同一労働同一賃金の導入など、子育てに適した環境整備は進まない
▼「堂が歪(ゆが)んで経が読めぬ」という言葉がある。僧が「仏堂が歪んで座りにくいので経が上手に読めない」と言い訳する様子から、責任転嫁するさまを表す。「問題」は子育てに苦闘する国民ではなく、政策と麻生氏の閣僚としての資質の方にある。