<金口木舌>一流に接するということ


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 総合格闘技の草分け的存在で“修斗のカリスマ”と呼ばれた佐藤ルミナさんにスパーリングで挑んだことがある。訳の分からないまま関節技を決められ、プロの実力を思い知らされた

▼格闘技は一見、力比べに見えるが、緻密さと、先手を読んで仕掛ける勝負勘が試される。どの分野でもプロは凡人では理解できないような戦術を展開し、戦局を見極めて難局を打開していく
▼超一流の対戦、対局に間近で接することはファンにとって至福の極みだ。さらにその雲上の存在と触れ合う機会があれば、強い刺激で自分の実力が引き上げられるかもしれない
▼かつては沖縄に将棋のプロ棋士が来ることすら珍しかった。だが、現在は日本将棋連盟沖縄県支部連合会がプロ棋士を招聘(しょうへい)し、対局などを通して県内のアマチュアを指導している
▼将棋の第68期王将戦七番勝負の第4局那覇対局が琉球新報本社ビルであすから始まる。挑戦者の渡辺明棋王が久保利明王将を相手に3連勝してタイトル奪取まであと1勝と迫っており、注目の一戦だ
▼沖縄からはまだプロ棋士が誕生していないが、昨年の朝日アマチュア将棋名人戦県予選大会では城北小学校5年の辺土名朝陽君が優勝するなど、有望な小学生も登場している。藤井聡太七段のように、独創性あふれる一手で周りをうならせる棋士が、沖縄から生まれる日が待ち遠しい。