<金口木舌>惻隠(そくいん)の情


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 「人をいたわしく思う心、あわれみの気持ち」。広辞苑を引くとこう書かれている。「惻隠(そくいん)の情」という言葉だ

▼現在ではあまり聞くことはなく、小説などで目にする機会も少ない。勝負がついて戦意がなくなった相手を、それ以上、攻撃しないこともこの言葉に基づく考え方だ。上の立場にある者が下位の者を気にかけるような印象がある
▼「他人の心中をおしはかること」。こちらは立場の弱い人が強い相手にすることが多い。2017年に流行語大賞に選ばれた「忖度(そんたく)」だ。どちらも、悪い意味ではない。だが今では、「忖度」という言葉を聞いて受ける印象は良くない
▼現在も疑念が消えていない森友学園・加計学園の問題。官僚が「忖度」したと指摘されている。再び耳にするようになったのは、国会で野党の追及が続く統計不正問題。官邸サイドの意向を受けて、官僚の「忖度」が働き、行政がゆがめられることはあってはならない
▼忖度との関連で静かに注目を集めているのが「元号」だ。安倍晋三首相は4月1日に「平成」に代わる新元号を事前公表する。専門家数人から2~5個の候補を考案してもらうという
▼元号には過去に何度も使われた漢字がある。これまでに17回使われ10番目に多いのが「安」だ。「安久」「安寧」「安泰」「永安」。予想が飛び交うが、よもや元号まで「忖度」されることはあるまい。