<金口木舌>手を上げなくても


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 バス停に立っていた。扉が開いたが、行き先の違うバスだった。「乗らない」という意味で手を横に振った。以前は違う路線のバスが来ると、ドアが開いてもじっとしていたり、少し離れたりした

▼しかし早めに意思表示をした方が乗客にも迷惑は掛からない。今では乗らないときは、手か首を振るようにしている。昔のバスは立っているだけでは止まらなかった
▼日銀の元那覇支店長、沼波(ぬなみ)正さんは著書「私の見た沖縄経済」で沖縄では手を上げなくてもタクシーは止まるが、バスは止まらない、と書いた。2000年9月発行の本だ。現在はどうか
▼バス停やバスの車内に「手を上げなくても止まります」という内容が掲示されているのも見たことがある。だが、停留所にいるだけで必ず乗れるとは限らない。スマホを操作していたり本を読んだりしていて目を離している間に、バスに素通りされる経験を何度もした
▼10分以上待っていたバスに乗れないとやり切れない。県バス協会によると、バス停に人がいる場合、必ず止まってアナウンスなどで伝えるよう指導しているという。乗務員によって対応が違うのかもしれない
▼観光客がそんな目に遭うと沖縄に悪い印象を抱くこともあるのではないか。モノレール以外に鉄軌道がない沖縄にとってバスは依然として公共交通機関の要である。利用者本位の運用が理想だ。