<金口木舌>拒まれるは暴力と差別


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 「沖縄人お断り」。かつて県外の飲食店などで見られた張り紙。映画を見ながら、その記憶が浮かんだ県民もいるのでは

▼映画界の最高峰とされる今年のアカデミー賞で、「グリーンブック」が作品賞を獲得した。1960年代、黒人ピアニストと主人公のイタリア系白人運転手が米南部を演奏旅行する道中、人種差別にあらがう物語
▼グリーンブックとは黒人が利用できる宿を紹介した本。レストランやトイレも肌の色の違いだけを理由に分けられ、黒人は差別された。映画は実話を基にしている
▼映画の時代から半世紀たつが、差別意識や憎悪から生まれた犯罪が後を絶たない。米国を中心に銃乱射事件が世界で相次ぎ、15日にニュージーランドのモスクでは50人が犠牲になった。容疑者は犯行声明で白人至上主義者の影響を受けたとしている
▼県民投票で示された反対の民意を尊重せず、名護市辺野古の海で強行される新基地建設は差別や暴力に映る。合理的な説明ができず、沖縄の意に介さない。政府はきょう、新たな埋め立て区域に土砂を投入する
▼岩屋毅防衛相は「沖縄には沖縄の民主主義、国には国の民主主義がある」と述べた。この国の民主主義に「沖縄お断り」と宣言したに等しい。映画の黒人ピアニストの言葉は現代に当てはまる。「暴力は敗北だ」。拒絶されるべきなのは民主主義に背く暴力である。