<金口木舌>沖縄の秋田杉と花粉


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 プロ野球が開幕した。沖縄をキャンプ地とする球団や県勢の活躍が楽しみだという人も多い。昨季パ・リーグで本塁打王の山川穂高内野手、最多勝を獲得した多和田真三郎投手が所属する埼玉西武ライオンズからも目が離せない

▼多和田投手は中部商高から富士大を経て、2016年にドラフト1位で入団した。昨年16勝を挙げた舞台裏では別の敵とも闘っていた。花粉症だ
▼春先、県外ではスギやヒノキの花粉が大量に飛散する。全国で4人に1人が悩むとされる花粉症はもはや国民病。多和田投手も苦しみ、17年末に鼻の粘膜を焼く手術を受けた
▼1960年代、沖縄戦からの復興を願う秋田杉の苗2万2000本が植林された。半世紀が過ぎ、人々の記憶から遠ざかった沖縄の秋田杉の記事が7日付本紙に掲載されると、花粉症の影響を気にする問い合わせが複数寄せられた
▼国頭村辺野喜では秋田杉が谷間に植えられていた。村森林組合に聞くと「仮に花粉が出ても周囲の広葉樹に阻まれ、県外のように飛散することはないのでは」との見解だ
▼環境省は花粉観測システムの自動測定器を沖縄だけには設置していない。スギ林とヒノキ林の面積が狭く、発症例が少ないからだという。ただし油断大敵。環境省も「花粉が沖縄に全くないということではない」と説明する。何事も絶対はないことを忘れてはならない。