<金口木舌>七曲がりと消えたユリ


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 テッポウユリが開花の時季を迎え、新緑を背景に真っ白な花びらが映える。大型連休中、テッポウユリが主役のイベントも県内各地で開催される

▼名護市許田~世冨慶間の旧1号線沿いは通称・七曲がりと呼ばれ、近くに国道58号も通る。30年ほど前の幼少期に付近を車で通過すると、内陸沿いに咲き乱れた光景が今も目に焼き付いている。1997年には少なくとも3万本が咲いていた
▼73年、テッポウユリは市花に指定された。名護のシンボルの一つに数えられるが、2000年代に入ると七曲がりから消えた。市や市民が植栽に取り組んだものの、根付かなかった
▼先週、七曲がりを歩き、10輪ほどの開花を確認した。案内した市文化財保存調査委員会の岸本林さん(64)によると、樹木が茂り、日当たりが悪くなった影響で、テッポウユリが根付かなかったとみられる。イノシシが球根を食べた可能性もある
▼75年に現国道が整備されるまで、七曲がりには段々畑が広がり、木々は少なく、その付近でテッポウユリは見られた。やがて時代と共に畑が減り、人の手も入らない状態となり、緑は回復した。岸本さんは「これも自然の流れだ」と語った
▼あすは平成最後の日。この時代に生まれ、消えたものはあまたある。自然は人を魅了し、心に潤いを与える。同時に、人の思い通りにはならないことも突き付ける。