<金口木舌>江戸で賑わった三つの場所とは


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 世界でも随一のメガシティーだった江戸。その街のにぎわいを表す言葉に「江戸三千両」がある。築地市場に移る前の日本橋の魚河岸での取引が朝千両。遊郭の吉原で落ちる金が夜千両。そしてもう千両は昼の芝居町

▼市民の胃袋と風俗、それに娯楽文化。かつては江戸歌舞伎を見せる芝居小屋が各地に点在していたらしい。それほど人々の暮らしにとって「芝居」は日常だったのだろう。落語にも、商人が芝居のまねごとをする蛙茶番(かわずちゃばん)など芝居にまつわる話は多い
▼ヨーロッパでは現代でも演劇が日常の中に根付いている。演出家の栗山民也さんに聞いた。一日の仕事を終えた市民らが夕方になると、街の広場に集まってきて、ライブを楽しむ
▼演劇や芝居というと敷居が高いイメージもある。だが元々は、鎌倉、室町時代に寺社境内での猿楽など芸能の見物席に由来していて、大衆のものだった
▼「演劇は時代を映す鏡」と言う栗山さんは「人間が犯してきた過去の戦争の悲惨さを、物語として現代に再生し検証していくことが、演劇人として、人間としての責任だ」と語る。今の世はどう映っているか
▼故井上ひさしさん原案で栗山さん演出の舞台「木の上の軍隊」が26日、沖縄で初公演される。チケットは完売したが、沖縄の後も全国を回る。居酒屋の時間を少し削って、舞台に映る世界をのぞきに行ってみるのもいい。