<金口木舌>月桃の花咲く頃に


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 「♪月桃白い花のかんざし 村のはずれの石垣に~」。海勢頭豊さんが作詞作曲し、映画「GAMA 月桃の花」の主題歌にもなった曲の一節だ。慰霊の月になると、自然と口ずさむ

▼映画のモデルになった県内最高齢の沖縄戦の語り部、安里要江(としえ)さん(98)が先月、体調不良を理由に活動を終えた。「命ある限り語るのが私の使命だった」と約40年、沖縄戦で夫と2人の子どもら親族11人を失った体験を県内外で語り、戦争の悲惨さを訴えた
▼糸満市真壁では、6月になると「月桃の花」が響く。戦後の混乱期に義務教育を十分に受けられなかった平均年齢約81歳の女性たち「歌声サークルかじまやぁ」の歌声だ。去年から区の慰霊祭で歌を奉納する
▼メンバーには沖縄戦を体験した人もいる。本島南部から石川まで逃げ惑った体験を振り返り、「70年以上たっても、慰霊の日が来ると戦争のことを思い出す」と語る女性も
▼沖縄戦体験者の言葉は胸に重く突き刺さる。しかし高齢化は進む。体験者の学校講話も減った。教員も戦後世代だけになり、平和教育の在り方を模索する
▼戦争体験者の生の声を聞ける時間は限られている。一言一言を胸に刻み、次代につなぐことが大切だ。22日の真壁区の慰霊祭では、優しい「月桃の花」が戦没者のみ霊を慰めた。今日は「慰霊の日」。深い祈りの中で、改めて平和な世を誓いたい。