<金口木舌>アポロから50年

 跳ねるように歩く宇宙飛行士の姿をかすかに覚えている。親に起こされ、薄暗い部屋に据えたテレビが映し出すモノクロの映像に見入った。アポロ11号の月面着陸から20日で50年

▼ベトナム戦争の泥沼の中、米国はアポロ計画を遂行した。月に降り立ったアームストロング船長が発した「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類には大きな飛躍」は歴史に残る名言となった
▼同じ年、米国で歴史に残る大イベントがあった。野外コンサートのウッドストックフェスティバルである。「平和と愛」がテーマだった。日本では学生運動が広がりを見せた。大学民主化、反戦が闘いのスローガンだった
▼沖縄は揺れていた。米軍基地に毒ガスが秘蔵されていた事実を米紙が報じ、大騒ぎとなった。日米両政府は沖縄返還交渉のさなかにあった。寝ぼけ眼でテレビを見ていた子は、そのことを知るよしもなかった
▼飛行士が月面に立てた星条旗は米国の国威発揚となっただろうか。大岡信さんの残した詩の一節が胸に響く。「私は月にはいかないだろう/私は領土をもたないだろう/私は唄をもつだろう」
▼アポロ計画は1972年に終わった。その後、地上では領有権や領土をめぐる紛争が続いている。50年前、大きな一歩を記した人類はどれほど前進できただろうか。7年前にこの世を去ったアームストロング船長の言葉を聞きたい。