<金口木舌>学友の亡魂を背負って


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 20日に他界した外間守善さんと6年ほど前、東京でお会いしたことがある。快活な笑顔が印象に残った。若い沖縄学研究者の育成にかける熱意がこちらにも伝わってきた

▼一兵士として沖縄戦を体験した。沖縄師範学校在学時に召集され激戦地に投げ出された。同じ師範学校に学んだ後の県知事、大田昌秀さんは鉄血勤皇師範隊員。2人は収容所で再会する
▼敗戦から8年後。外間さん、大田さんらの編著「沖縄健児隊」が出版される。この中で外間さんは「永遠に沖縄の野を、山を、街をさまようであろう学友達の亡魂を背負い、その重みに堪えてゆかねばならぬ」と生き残った者の覚悟を記す
▼ひめゆり学徒隊の生存者が編んだ「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」と並ぶ沖縄戦証言集の先駆的な作品だ。戦場に放たれた若者の慟哭(どうこく)、生き残った者の苦悩が行間ににじむ
▼外間さんは戦後60年の節目に著書「私の沖縄戦記」で自身の体験を詳述する。「沖縄に未(いま)だに訪れていない真の平和についてもう一度考えてみたい」が出版の動機だった。学友の亡魂に突き動かされたのだろうか
▼「おもろさうし」の研究に身をささげ、20世紀から21世紀への沖縄学の橋渡しに励んだ外間さんは戦場で倒れた学友の影を若き研究者に見たのではなかったかと今にして思う。学友の元へと旅立った外間さんにそのことを尋ねてみたかった。