<金口木舌>心が一つになるということ


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 人の心に掛け替えのないものを届けようと一心に取り組む姿は美しい。心を揺さぶられる。合唱もその一つだろう

▼20日夜、那覇市首里の県立芸術大学奏楽堂ホールで学内演奏会(合唱)が催された。学生ら女声37人、男声18人の押し寄せるような歌声に圧倒された
▼宮城敏氏の指揮、安冨祖貴子氏のピアノで「赤とんぼ」など日本の唱歌3曲とメーンの「レクイエム」(G・フォーレ作曲)が歌い上げられた。学生たちにとって、4月からの授業の成果を披露する晴れの舞台だ
▼声は優れた「楽器」だということを再認識させられた。肉体から発せられる響きには、楽器が織り成すハーモニーとは異なる味わいがある。学生たちの声には55通りの個性がある。一人一人の声質は異なっていても、55人が織り成すハーモニーは息をのむほど美しい
▼楽器を使わずに声だけでハーモニーを奏でる歌い方に「アカペラ」がある。演奏会とちょうど同じ頃、民放のテレビ番組で、芸能人がグループを組みアカペラの腕を競うものがあった。出演者の1人が「聴く人に自分たちの心が伝わったと思う」とコメントしていた
▼学生も芸能人も歌い終えた時の表情がまぶしかった。個性を調和させ、掛け替えのない価値を生み出した人の輝きか。あらゆる分野で今、個性を生かしながら理想、理念を実現していくエネルギーが必要だと感じた。