<金口木舌>良識ある保守の重鎮


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 今年7月に沖縄で講演した元衆院議長、河野洋平さんが「政治はどうも政策的には右へ右へと曲がりつつある」と述べた。ブレーキを掛ける勢力は絶滅の危機―と、タカ派色を強める保守政治にハト派重鎮は懸念を示した

▼保守人脈の中心にいて保守政治を憂える人が沖縄にもいた。23日に亡くなった元県出納長の米村幸政さんだ。県教育長、那覇商工会議所専務理事、那覇市観光協会会長などを歴任
▼西銘保守県政の時代、県内小中高校への「日の丸掲揚・国旗掲揚」推進で中心的役割を担い、各方面からの批判の矢面に立った。1991年に同商議所へ移籍後は経済振興に関わるとともに、県内政界・経済界の“接着剤”的存在だった
▼「日本の旗が過去に軍閥、帝国主義に利用され、中国、東南アジアに大変な侵略をした。この歴史の事実は教えないといけない」。20年前に取材で初めてお会いした時こう述べた。「保守の良識」を感じた
▼沖縄戦で「集団自決」(強制集団死)のあった座間味村の出身。教科書検定の歪曲(わいきょく)が問題化した折には「少しずつ書き換えられていけば、そのうち『何もなくて沖縄戦が終わった』となってしまう」と危惧した
▼勇ましい言説を好まなかった。戦争の悲劇を知るウチナーンチュの魂がそうさせたのだろう。天へ旅立たれる前に保革構わずもの申す“米村節”をもう一度聞きたかった。