<金口木舌>陽動作戦


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 一つしかないものを取り合う時、勝敗を決める時、最も簡単な方法がじゃんけんだ。道具もいらず、短時間で決着がつく。偶然性が勝負を左右するから、公平とみなされる

▼しかし、じゃんけんは心理的要素も大きい。人気グループAKB48総選挙のじゃんけん大会では、大きなチョキ型のイヤリングをした篠田麻里子さんの対戦相手はグーを出す確率が比較的高かった。優勝は陽動作戦の成功例かもしれない
▼東京大が開発したじゃんけんロボットは超高速カメラで相手の手をとらえ、勝率100%。公平か否かお遊びの話なら目くじらをたてることもなかろう
▼選挙ではどうか。日本維新の会の橋下徹氏が選挙区調整に関して「最後はじゃんけんで決めていい」と発言した。呼び掛けられたみんなの党の渡辺喜美代表は「じゃんけんで決められるほどいいかげんな候補者を選んでいない」と反発したから、合流のプロポーズとしては失敗だろう
▼橋下氏は「じゃんけんは『理屈でなくまとまろう』という強烈なメッセージだ」と反論した。真意はともかく「じゃんけんで…」と言われ、安易に「いいね!」とはやはりなるまい
▼基地問題、脱原発、TPP、消費増税と社会保障改革など争点は多岐にわたる。陽動にも心理戦にも乗らず、じっくり政策を見極めよう。有権者の選択権をしっかり行使したい。