<金口木舌>重鎮4氏の“白熱討論”


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 平均年齢81歳。復帰後の県内政財界や思想・言論界のリーダーとして、県民にも深い影響を与えたこの4人が一堂に会して討議したのは初めてだという

▼法政大沖縄文化研究所が東京都内のキャンパスで開いた復帰40周年シンポジウム。ともに知事を務めた大田昌秀、稲嶺恵一の両氏、ジャーナリストの新川明氏、元沖縄大学長の新崎盛暉氏が出席した
▼東京で実現した豪華論客の顔合わせは期待通り、いや予想以上に内容の濃い討論となり、予定を1時間超過。話に熱が入りすぎて時折質問を忘れてしまうこともご愛嬌(あいきょう)。議論を聞き終えて、名著を一気に読み終えたような疲労と清涼感を覚えた
▼研究者から知事に転じた革新の大田氏と、経済界の顔だった保守の稲嶺氏が戦ったのはもう14年前。討論ではかつての政敵同士が、ともに基地問題の解決に向けた政府や国会の怠慢を鋭く突いたことに感慨を覚えた
▼復帰前後に「反復帰論」を唱えた新川氏と「米軍支配」の矛盾を冷徹にえぐり続けてきた新崎氏は、沖縄独立をめぐって論争した間柄だ。主張は違えど、沖縄の自己決定権確立を求める立場では共通点もある
▼シンポでは司会から、沖縄側の独立論を冷ややかに見る本土の若い世代からの質問も紹介された。復帰後40年を引っ張った沖縄の重鎮たちの議論は本土の若者にどう響いたのか。思考の深まりを期待したい。