<金口木舌>表現の変化と共感


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 テストで満点、「マジヤバイ」。体育が持久走で「ウザッ」。夕べもカレーなのに給食がまたカレー…「キモッ」。でもデザートがプリンだから「チョーカワイー」。今どきの中学生の一日はこんな感じだろうか

▼先日、名護市で開かれた、教育研究者・村瀬公胤さんの講演での話題。ヤバイ、ウザイ、キモイ、カワイー、最近の中学生が喜怒哀楽を表現する単語はたった四つという。静かな怒りも激しい憤りもどれも平板に「ウザイ」
▼がっくり来るが、必ずしも子どもの表現力が貧しいことはないと思う。講演の前にあった小中学生のダンスパフォーマンスは表情きらきら、自己表現力抜群だった
▼歌やダンス、スポーツなど子どもたちの表現方法が進化しているのかもしれない。舞台狭しと動きながら、体全体を使って自分をアピールする姿は確かに輝いて見えた
▼でも、と思う。音楽やダンスの力は素晴らしいが、コミュニケーションの基本はやはり言葉ではないかと。言葉のやりとりを通して相手との共感が生まれ、喜びや楽しみは倍になる。怒りや悲しみは癒やされる
▼例えば「テストで100点取るためにこんなふうに頑張ったんだ」。そう言ってくれれば「よく頑張ったね」と共感の言葉も広がる。単語一つで済ませる子どもに大人も会話が単調になっていないだろうか。自戒を込めて共感を深める表現の幅を広げたい。