<金口木舌>「旧役場」が新しい長寿の仲間入り


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 長寿ムラで知られる大宜味村に先日また、新しい米寿(トーハキ)仲間入りした。といっても1925年生まれの「旧役場庁舎」。現存する鉄筋コンクリートの公共施設では県内最長老だ

▼「役場の2階から集落を眺め将来を夢見たのよ」。60代後半の知り合いの女性が懐かしむ。地元の子どもらは週末、裏手の大木をつたいこっそりと役場のベランダに入り、遊びながら自身の未来を描いたという
▼今も村史編纂室として存在感を示すが、その昔、かやぶきの家屋が並ぶ中、凜とした姿は地域のシンボルそのものだったことだろう。さらに「健康状態」にも驚かされる
▼建設当時はコンクリート技術が沖縄に入ってきた初期のころ。見本もほとんどなかったはずなのに、今も鉄筋の腐食は見られない。設計、建築とも匠(たくみ)の最高技術を伝える
▼八角形の設計で台風の風圧をいなす工夫などは、先人らが示した未来へのヒントか。県立工業高校の前身である産業技術学校の指導者も多く輩出した大宜味大工。その高い志も伝わって来る
▼県指定有形文化財の建造物は20カ所。地域で活用する「現役」も複数ある。周囲を圧倒する高層の建物も増えるが、風土に根差し生き続ける古参から学ぶべきものも多い。先日あった旧役場のトゥシビー祝い。式典終了後参加者が誇らしげに言った。「次は97歳のカジマヤー祝いだ」