<金口木舌>備えあれば憂いなし


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東日本大震災の一日も早い復興は全国民の願いだ。だが、あまりにも被害が甚大なために、復興が順調に進展しているとは言い難い

▼震災後、注目を集めているものにBCP(事業継続計画)がある。BCPとは企業が災害などの緊急事態に遭遇した場合、元の状態に復旧するための対応策をまとめた計画のこと。各企業でBCP策定に取り組む動きがある
▼11月下旬、那覇市内で県産業振興公社と中小企業基盤整備機構による中小企業のためのBCP対策セミナーが開かれた。現在、九州・沖縄の企業でBCPを策定しているのは1―3%にすぎないという
▼講師で経営リスクの研究所代表を務める薗田恭久さんは訴えた。「防災計画の延長ではなく、会社の命を途絶えさせないのがBCP」と。県内に多い中小企業にこそ重要なリスク管理なのだ
▼被災地の企業の事例も紹介された。宮城県名取市の廃油リサイクル業者は、震災直前にBCPを策定していたおかげで、社長宅を仮事務所とするなどし、被災後1週間で一部の業務が再開できた
▼震災から1年9カ。南海トラフ巨大地震で日本全域が地震や津波の被害を受ける恐れが指摘されている。「天災は忘れた頃にやってくる」の言葉通り、災害への油断は禁物。企業に限らず家庭も「命を途絶えさせない」という発想で自衛策が必要ではないか。「備えあれば憂いなし」だ。