<金口木舌>原点を忘れてはならない


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 「ナンギ、クチサ、ワカラントゥ、ムノーワカインナー」(難儀や苦労を知らないで物の道理は分からんよ)。10年掛かりで琉球在来豚アグーの生産を軌道に乗せた名護市の会社社長から、教えてもらった

▼ウチナーグチを使いこなせない世代にとって、先輩方から聞く言葉は含蓄があって、ありがたい。良質の種豚を求め、交配でよりよい豚を生産するのに奔走したという苦労話に引き込まれた
▼もう一つ話していたのは迷ったら原点に戻るということ。アグーもそうだが、一時ブームになったシークヮーサーも今は落ち着きを取り戻し、味など本来の魅力で売り出す。ブームに惑わされず、最後の決め手はやっぱり本来の味というのも納得
▼苦労したからこその言葉だが、社長は「今の若い人には通用しないかも」とも述べた。二代目、三代目など敷かれたレールの上を走るような生き方をする人には無縁の言葉なのかもしれない
▼きょうは衆院選投票日。与党で政権運営の苦労を知った政治家もいれば、野党暮らしの難儀さを知った政治家もいるだろう。実質1カ月ほどの選挙戦を終え、夜には新しい政権の枠組みが見えてくる
▼難儀と苦労を知るからこそ新たに開ける道もある。消費税、原発、領土問題などどれも難問だ。ブームに乗る感覚ではとても処理できまい。政治は原点を忘れてはならない。国民主権という原点を。