<金口木舌>舞台が教訓を呼び覚ましてくれた


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 国王の座を約束された若者と村娘の悲恋。西洋のバレエに琉球芸能を融合した“琉球バレエ”という新境地。琉球王朝時代を題材にしたN・Sバレエ団公演「天川の誓い」を衆院選の当日、鑑賞した

▼琉球音階が染み込む音楽、琉球舞踊の要素を取り入れた演出と、トウシューズでの伸びやかな踊りが違和感なく溶け込む。わくわく感が心地良い。棒術や空手を踊りと組み合わせた琉星太鼓も新鮮だった
▼主宰の長崎佐世さんは台湾生まれのウチナーンチュ、主役の長崎真湖さんは中国でプリマ(第一)バレリーナとしての技術を磨いた。若者役のビャンバ・バットボルトさんはモンゴル出身で、熊川哲也氏率いるKバレエカンパニーで活躍
▼1つの舞台にアジアが集う。「これがいいんだ」。国境を越える文化の力を垣間見た。俗世界は、北朝鮮の事実上のミサイル発射だ、「国防軍」創設だ、とかまびすしい。軍事的“挑発合戦”で誰が得をし、幸せになるのか
▼来週から安倍晋三氏が首相に再登板する。バレエの美しさにはわくわくしたが、次期首相の“美しい国劇場”再演は、国民にどう映るか。ハラハラ? ドキドキ?
▼せりふのない芸術バレエは、国境、言語、民族の違いを越え楽しめる。政治にどうして、それが越えられないのか。交流、交易こそがアジアの国々、島々の生きる道。舞台が歴史の教訓を呼び覚ましてくれた。