<金口木舌>クリスマス・キャロル


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 きょうはクリスマス。この時期になると思い出す物語がある。チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」だ

▼スクルージという強欲な守銭奴の主人公が過去、現在、未来の3人のクリスマスの精霊と出会い、忘れていた慈悲や感謝の心を取り戻す。170年近く前の作品だが、世界中の人に今も愛されている
▼物語から現実の世界へ目を向けると、今年は悲喜こもごものニュースがあった。ロンドン五輪では日本勢が過去最多の38個のメダルを獲得した。京都大の山中伸弥教授が再生医療へつながる「iPS細胞」の開発でノーベル医学生理学賞を受賞。日本の底力を世界に示した
▼その一方でこの国はいまだ閉塞(へいそく)感に覆われている。政治経済の混迷、国民に重くのしかかる消費税増税の決定。尖閣、竹島をめぐる外交問題の深刻化。東日本大震災、原発事故の影響…
▼復帰から40年がたった県内では、向こう10年をにらんだ新しい振興計画がスタートしたが、基地問題の解決では一向に明るい兆しは見えない。こうした現実を前に悲観的にもなるが、決して諦めたくはない
▼「クリスマス・キャロル」では、主人公が悪夢のような自分の未来は変えられることを知る。私たちも過去は変えられないが、未来は変えられる。手始めにきょうから大切な人と共に、明るい未来を語り始めてはどうだろう。