<金口木舌>地域や生活者と向き合う政策を


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 子どものころの遊び場はいまだに夢に出てくる。自宅前の坂道、廃屋跡の広場、ハブの抜け殻におびえた茂みやカニを追った小川

▼こうした原体験をお持ちの方は多いだろう。福島で今、肥満傾向の子どもたちが増えているという。原発事故で屋外活動が制限されたことが影響していると聞く。不憫(ふびん)でならない
▼大津波災害と原発事故から初めて迎えた総選挙で各党は「被災地の復興」や「福島の再生」をこぞって訴えた。むろん賛成だが、目の前のいくつもの課題について具体的な議論が深まったとは思えない
▼沖縄に関しても同様だ。「同盟強化」「領土・領海保全」といったスローガンの下、米軍駐留の重要性が再三強調されたが、「有事に米軍は何をするのか」「輸送機のオスプレイが尖閣にどう関わるのか」といった具体的な疑問に説明はない
▼発足した第2次安倍内閣は当面、経済重視の「安全運転」で走るという。公共事業を中心とした財政拡大や金融の大幅緩和といった大きな話題が関心を呼ぶが、足元の景気後退や雇用の悪化、社会保障不安など喫緊の課題は山積みだ
▼美辞麗句や勇ましい主張は要らない。子どもたちが元気に遊び、皆が将来も平和と豊かさを享受できるために何が必要か。一度しくじった首相なら、地域や生活者と同じ目線で向き合う誠実な政策の大切さは痛いほど分かるはず、と信じたい。