<金口木舌>「ゴジラ」よ再び


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 「ゴジラ」の異名を持つ野球界の怪物、松井秀喜外野手が20年のプロ野球生活に終止符を打ち、バットを置いた。石川・星稜高時代から高校生離れした飛距離を生み出したパワーは、ゴジラの名にふさわしかった

▼巨人と大リーグでちょうど10年ずつ、プロ生活を送った。2009年のワールドシリーズではヤンキース優勝の立役者となり、最優秀選手(MVP)に選出された。メジャーリーガーとして最大級の栄誉をつかみ、国民に勇気と感動を与えた
▼引退の報は急だった。理由は「僕のいいプレーを期待している方々にその姿を見せられるかは非常に疑問だった」。謙虚な言い回しだが、松井らしいプロとしての厳しさがうかがえる
▼強い精神力と頑強な体、そして類いまれなパワーで、20年間に数々の金字塔を打ち立てた。だが、プレー中の勝負に対する厳しい表情とは対照的に、試合後のインタビューは常に感情を表に出さず、淡々と穏やかに語る姿が印象的だった。紳士でもあった
▼一番の思い出は、巨人時代に「毎日のように長嶋茂雄監督と二人で素振りをした時間」だという。これが松井の野球人生の礎になった。今後、指導者への意欲ものぞかせている。ぜひ、そうあってほしい
▼長嶋氏の指導が松井を育んだように、今度は松井が名選手を育てる番だ。ファンは第2、第3のゴジラの登場を期待している。