<金口木舌>「うちなーむん」で対話再開の扉を


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 オランダの揚げドーナツに、スペインとメキシコのブドウ、イタリアはソーセージ、レンズ豆。日本の年越しそばに当たる、大晦日(みそか)の定番料理だ

▼そんな今年を締めくくる食事を県産食材で―と急ピッチで収穫したのが大宜味村蕎麦(そば)生産組合。本紙27日付社会面で慌ただしい作業が紹介された。沖縄も自然の恵みの豊かさを実感させる食材はいっぱいある
▼今年は9個の台風が襲来した。生産者は苦労が多かっただろう。しかし特産品で地域を盛り上げたいとの熱意は決して失われていまい。加工や販売まで連動した6次産業化の取り組みの活況がそれを物語る
▼食を制する地域は観光を制す―。過日、那覇市での講演でJTB総合研究所の篠崎宏研究員は語った。全国各地で食、農業、観光のモデルを構築。「少しの変化が新鮮さを演出する」と食品開発の魅力を説いた
▼アジアからの誘客に触れ、世界水準の観光リゾートを目指す沖縄にも期待した同氏。しかし、現状は那覇と中国を結ぶ空路で運休や減便が続く。吉祥航空は就航自体を延期したまま年を越す。中国観光客は尖閣問題以降、下降の一途だ
▼食の対話は沖縄観光への呼び水となるほか、県産品振興の原動力となろう。新年早々、香港で県産物産展が始まる。政府ができないのなら、「うちなーむん」で対話再開の扉を。交易立県の底力を示そう。