<金口木舌>期待の独り歩きは用心を


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 年明け早々、友人の第一子のお祝いをした。愛くるしい瞳に心が和んだ。支局時代に経験した宮古島の出生祝い「ナーフィー」を思い出した。名付け披露の宴で、名前に込めた思いを話す“新米親”の姿もまぶしかった

▼誕生と言えば、第2次安倍内閣からも目が離せない。誰が命名したのか、日本経済再生へ脱デフレと金融緩和を掲げる安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」が世間の耳目を集めている
▼2%程度の消費者物価上昇を目標とする景気浮揚策は円安、株高の新年の東京市場を見ると、一定の効果か。東日本大震災前の水準に戻った平均株価はアベノミクスへの期待感と言えよう
▼バブル崩壊後続く「失われた20年」からの脱却を期待したい。ただ、その間に戦後最長の「いざなぎ景気」を超える69カ月の“実感なき好景気”があったことを想起すると、浮かれるのは早い
▼これは第1次安倍内閣のころの話だ。GDP実質成長率は年平均2%弱で、いざなぎの10%超、バブル景気の5%程度と比べ低水準。日本世論調査会の調べでも、約8割が大都市圏と地方との景気格差を感じていた
▼「アベノミクスは投資など経済活動の突破口となってほしいが、実体は見えないからねえ」。新年会の席上、複数の企業家からこんな言葉を聞いた。子どもの初歩きと違い、政治は期待の独り歩きでは困る。