<金口木舌>“ダブリーズ”の可能性


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 「ダブリーズ」というのは、高校を留年した彼らが自らにつけたあだ名だった。16年前、ある高校は1年生で63人もの留年を出した。ほとんどは出席不足で、中途退学も多かった

▼苦肉の策として同校は留年45人をまとめて1学級つくった。ダブリーズだ。知名朝次先生(現浦添工業高教頭)が担任となり、反抗的で遅刻や欠席を繰り返す生徒を学校全体で支援した。この取り組みは高校中退が全国ワーストワンだった沖縄の“成功例”とされた
▼先日、ダブリーズの一人、宮城敏也さんの結婚披露宴に招かれ、久しぶりに知名先生や30代半ばになった彼らと再会した。10年前の連載「君はひとりじゃない」で中退問題を取材して以来の付き合いだ
▼敏也さんは大学を卒業して人生の伴侶を得、地域活動や地元の中高生の指導に頑張っている。眉をそり金髪だった仲間も、子を得て、仕事を持ち、すっかり落ち着いた大人の顔になっていた
▼体罰やいじめ自殺などで教師の指導力が問題になっている。シンプルかもしれないが、その答えの一つは大人になった生徒からも慕われる存在になり得るかどうかだと思う
▼知名先生は教師になる時、父親に言われた。「子どものことをおまえが決めつけてはいけない」。可能性を見よ、と。教師と生徒が諦めなかったからこそ、ダブリーズの友情、家族、未来があるのだと教わった気がした。