<金口木舌>人生を彩る座開き


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 沖縄本島で祝宴の冒頭を飾る座開きの演目と言えば「かぎやで風」と相場が決まっている。宮古では「とうがにあやぐ」、八重山は「赤馬節」「鷲ぬ鳥節」などが演じられる。いずれも格調を備えた歌と踊りだ

▼結婚式の余興の幕開けも「かぎやで風」が筆頭格。新郎新婦の同僚や友人は練習を重ね、晴れの宴で舞う。少々不出来でも門出を祝う気持ちは舞台から十分に伝わってくる
▼地域行事ではお年寄りから子どもたちまで幅広い年齢層が座開きを担う。隣のおじいさんや幼児が歌い、踊ってくれる。それだけで行事は和やかになる。座開きを通じて地域の人々の輪が広がっていく
▼この2人の座開きには「生きがい」という言葉が似合う。「かぎやで風」を心の支えとしているのが沖縄市に住む87歳の富濱ヨシ子さんと86歳の米須紀子さん。沖縄市の通所介護施設「登川の里」でリハビリに努めながら、施設行事で仲良く踊る
▼ここでは座開きが心と体の機能回復を助けている。行事で踊るという目標を掲げ、稽古に励むことが生活の張りにつながる。「目標、生きがいづくりが介護には大切」と施設長の福里悦子さん
▼座開きの演目は地域によってさまざま。演じる人の立場や思いもさまざまだ。富濱さんと米須さんは生きる喜びを座開きに見いだした。快活に話す2人の姿に人生を豊かに彩る術を見た気がした。