この人がいなければ日本、いや世界で今のようにカキを楽しみ、味わうことはできなかっただろう。大宜味村出身で「日本の牡蠣(かき)王」と称賛された宮城新昌(1967年没)
▼宮城が養殖技術を成功させた宮城県石巻市にある顕彰碑が大震災の津波で壊れ、大宜味村も協力して復活させる取り組みが進んでいる。19日に同村で「養殖の父」をテーマにシンポジウムも開かれた
▼顕彰碑に刻まれるのは新事業に挑戦し、隆盛の礎を築いた歴史。石巻市から届いた趣意書を読むと、宮城への感謝と尊敬の念が伝わる。碑復活が東北復興に取り組む養殖関係者にとって心の支えになることも
▼ただ村関係者に聞くと、少し残念なのは古里の大宜味村で、宮城の功績を知る子どもが少ないこと。この機会に多くの子どもたちがやんばるで生まれ、世界に貢献した人物の肖像に触れてほしい
▼かつて大宜味村もカキ養殖をしていたが、開墾・開発による赤土流出で海が汚れて廃れた。豊かな海を育てるには森から育てよ―という東北の知恵を沖縄に“逆輸入”することも考えられる
▼人のつながりが文化、産業の交流へと発展する。手始めに北国のカキと南国のシークヮーサーの組み合わせが、どんな味を生み出すのか。想像するだけでも楽しい。1800キロ離れたやんばると東北に創造の種をまいた宮城の偉業に感謝したい。