<金口木舌>寄り添い、話を聴く


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 2012年の全国の自殺者数が2万7766人と、3万人を切った。1998年に3万人を超えて以来、実に15年ぶりだという

▼内閣府の担当者は「各自治体の実情に合った取り組みが効果を上げているのでは」とみている。しかし、依然として2万8千人近くが自ら命を絶っているという厳しい現実が横たわる。同年の全国の交通死亡事故者4411人の6倍以上だ
▼県内も267人と、前年の387人から減少した。行政や民間の地道な取り組みが広がっているとも言えるが、引き続き県民挙げた取り組みが大事だ
▼さまざまな悩みに耳を傾ける「沖縄いのちの電話」に寄せられた「自殺志向」と判断される相談は増加する傾向にあり、2011年には1057件と過去最多となった。長引く不況や病など背景はさまざま。生きる希望を失った人が社会の隅々にいるかと思うと胸が痛む
▼以前、その事務局を取材したことがある。大切なことは相談者の話に「丁寧に耳を傾けること」だという。悩みに耳を傾けることで、少しでも心が落ち着くかもしれない。声を掛ける、その人に寄り添って話を聴く。それが相談者の苦しみを希望に変えるきっかけになると信じたい
▼大切な人を失うと家族や仲間にも大きな悲しみが残る。その支えも必要だ。何よりも悲しみの連鎖を防ぐ取り組みを続け、人を「追い込まない社会」をつくりたい。