<金口木舌>「ひまわり」の心を全国へ


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 おととし、北部工業高校10期生の模合に恩師が招かれた。「みんなで集めました」と手渡された封筒には10万円。映画「ひまわり」の製作協力費だった。スタッフの宜野座映子さんは教え子たちの熱い思いに感激した

▼宮森小米軍機墜落事故を題材にした「ひまわり」の上映が県内で始まっている。北谷町や沖縄市では立ち見も出るほど。どの会場でもすすり泣きと拍手が消えない
▼過去をたどるだけの映画ではない。沖国大ヘリ墜落や米兵優遇の日米地位協定に加え、基地従業員の苦悩、冷めた若い世代、本土の無関心にも迫り、リアルな沖縄の今を映し出す
▼脚本作りでは、元基地従業員など多くの県民から生の声を聴き、何度も書き直したという。声高ではない作りが心にじわっと染み入り、共感を呼ぶ
▼4千万円の製作費は一口千円で協力を募り、目標にほぼ到達した。「集会には参加できないから」と大金を寄せた焼き鳥店主をはじめ、一人一人の思いが詰まった浄財だ。「オール沖縄で作った県民の映画」と発案者で県映画センター代表の本村初枝さんは強調する
▼見た人からは「本土の人に見てほしい」との感想が目立つ。県外上映は26日から。全首長らが参加する東京行動の前日だ。小さな島に不条理を押し付けるこの国のゆがんだ姿を変えるためにも、「ひまわり」の種が全国に広がり芽吹いてほしい。