<金口木舌>大人の道草


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 道端に生えているシシダマの実をポケットに押し込み、得意げになって家に帰った。それを畳の上で並べたり、小箱に入れてじゃらじゃら鳴らして遊んだ。小学生のころの、道草にまつわる思い出だ

▼そのシシダマを、ちょっと立ち寄った沖縄市の銀天街で久しぶりに目にした。県内各地で開催中の「沖縄チャンプルー博覧会」のプログラム、イグサを使ったハブ作りでのことだ。シシダマは目の部分に使う
▼「最近、シシダマを見なくなったね」「先日までうちの近くにあったけど、工事でなくなったよ」。そんな会話を聞いているこちらもうなずく。シシダマとの出会いで懐かしい気分に誘われた。道草して良かった
▼出会い、触れ合いが道草の魅力。いつもの帰り道を少しだけ遠回りしてみると、未知の風景、街並みが広がっていたという経験は誰しもあるはず。そんな時、得した気分に浸れるものだ
▼コザであれ、那覇であれ、沖縄は道草の魅力にあふれている。ぶらりと歩けば、おのおのの土地で育まれた文化に触れることができる。それを大切に守り伝えてきた人がいることも。それは沖縄の掛け替えのない宝物だ
▼3回目を迎えた「沖縄チャンプルー博覧会」は「まち歩き」の楽しさを打ち出している。それを「大人の道草のススメ」と言ってみたい。ちょっと歩いてみよう。日々の暮らしに潤いが増すはずだ。