<金口木舌>歌詞に込めたメーゴーサー


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 「ビセカツ」の筆名で作詞活動を続ける音楽プロデューサー備瀬善勝さんの第一作は1968年の「帰って来たよ」だった。普久原恒勇さんが曲を付け、コーラスグループのポップトーンズが歌った

▼65年の佐藤栄作首相来沖に触発されて書いた歌詞は明るい曲調に反し、わさびが効いている。ウチナー風に言えば「コーレーグースが効いている」。作者はピリッとしたメッセージに何を織り込んだのか
▼「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、日本の戦後は終わらない」という佐藤首相の歴史的発言に備瀬さんは「ユクシ」をみた。「ホラだけ吹いちまって帰って来たよ」と皮肉まじりのメーゴーサーを放った
▼「発言を聞いて頭にきた。アメリカに沖縄をあげた日本の政治家には復帰は無理だと思った」というのが「ホラ」に込めた怒りと疑問。それは当時のウチナーンチュにも共通したものだった―と備瀬さん
▼今も平和集会で歌われる87年の作品「やさしい心を武器にして」では「戦さの嫌いな人が住み 戦争を放棄(すて)たこの邦に 誰が決めたか基地がある」とつづった。ここでも明るい普久原メロディーに乗せた歌詞に怒りと疑問がこもる。変わらぬ沖縄の現実故か
▼「満額回答」予算を引っ提げて安倍首相が明日やってくる。ホラを吹かないでほしい。言葉のメーゴーサーが不要となるのをただ祈るばかり。