<金口木舌>若者の内なる声に耳を傾け


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 「〓啄(そったく)同時」という故事がある。「〓」はひながふ化する時、殻の中から突く音。「啄」は母鳥が外から殻を突くこと。元来は、禅宗で師が悟りを得る直前の弟子に、教示を与え悟りに導くとの意味があるようだ

▼「子どもたちの内なる声にしっかり耳を傾けてほしい」。かつて連載の取材で訪ねた新里恒彦さんも教師や教育相談員としての経験とともに、この言葉を引用し不登校など心の問題に向き合う大切さを説いていた
▼時は移り、今や“親心”だけでは済まず、若者の悩みを社会全体で理解し自立を手助けする時代。「サポートステーション(サポステ)」の活動もその一つだ。大人や社会の役割も変化する
▼厚労省は、サポステを現在の国内116カ所から2013年度中に160カ所に拡充、職業訓練をした企業にも助成金を支給する。県内にも現在4カ所。ニートなど若者の就労支援を手厚くしようというものだ
▼県内のサポステは一括交付金を活用し、脱「引きこもり」の支援に力を入れる。5年以上の“空白”を埋める作業はたやすくないが、社会に溶け込める環境を築き、就職への道を切り開いていくのだという
▼これまでの就業実習は水産養殖や菓子製造、運送など多岐にわたる。若者の意欲を後押しする生活支援、企業側の理解が、あうんの呼吸で広がる。現代版「〓啄同時」となるか。

※注:〓は口ヘンに「卒」