<金口木舌>スポーツと絶対服従


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 「沖縄の子はスポーツで大学へ行くと長続きしない場合がある」。複数の部活動指導者から以前、聞いた。理由は、指導者や先輩への絶対服従を強いる縦社会的な慣習になじめないからだ

▼沖縄における教師や先輩とのコミュニケーションは、人懐っこい水平的な人間関係が特徴。「大学で初めて序列の厳しさに接して、カルチャーショックを受ける」とも聞く。人間関係に苦労するだけでなく、体罰と紙一重の“しごき”、いじめの標的にされることもあるようだ
▼好きなスポーツに打ち込み、国内や世界の舞台で活躍し、いずれは指導者になる。目標を掲げて進学したはずなのに、競技以外で挫折するのは惜しい。一番悔しいのは本人だろう
▼柔道女子日本代表の暴行問題は監督辞任にとどまらず、強化担当理事の辞任など柔道界全体に波及した。告発があぶり出したのは、指導者を絶対視してきたスポーツ界の負の体質だ
▼15選手は「コミュニケーションや信頼関係が決定的に崩壊していた」と訴えた。“愛のムチ”とは、前監督の勝手な思い込み。選手には暴力以外の何ものでもなかった
▼ロス五輪金メダリストで、全日本柔道連盟理事の山下泰裕さんは「私が全日本監督時に目指したのは最強の選手づくりではなく、最高の選手づくり」と述べた。勝利至上主義ではない選手育成策はいかに。「論より証拠」を見届けたい。