<金口木舌>おばちゃんの庶民感覚


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 「マドンナ」と言えば誰を思い出すだろうか。米の人気歌手か、小説「坊っちゃん」の登場人物か。ふた昔前にはマドンナ旋風が政界に吹き荒れた

 ▼1989年の参院選で大量の女性議員が当選し、全議員に占める割合は18%に急伸した。女性の政治進出に拍車が掛かるかと期待されたが、いまだ衆院8%、参院14%にすぎない。韓国では一国のリーダーが誕生したというのに
 ▼そんな中、注目を集めているのが「全日本おばちゃん党」だ。大阪の女性を中心に冗談で結成したインターネット上の“新党”だが、男性主導の政治を変えたいという信念は本物だ
 ▼主張も明確で小気味いい。基本理念の第一が「うちの子もよその子も戦争には出さん!」。さらに「核のごみはいらん」「力の弱いもんを大切にする社会」など地べたに足を着けた生活者目線が利いている
 ▼現実の政治では、景気の高揚感とは裏腹に、生活保護には大なたを振るい、公共工事には大盤振る舞い、国防軍やら憲法改定やらと、きな臭い古い政治が再来している。勇ましい強者の論理がまかり通るご時世だからこそ、おばちゃんの庶民感覚が欠かせない
 ▼サッチャー元英首相はこんな言葉を残している。「言いたいことは男に頼みなさい。やりたいことは女に頼みなさい」。口ばかりで実行力の乏しい「おっさん政治」への鋭いツッコミに期待したい。