<金口木舌>地球規模の受動喫煙


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 身ごもった後もたばこをやめない妊婦がいる。環境省の調査では、24歳以下で1割(4日付)。産科医の中には、宿した命の重さを自覚してもらおうと、喫煙中に胎児がもがき苦しむエコー検査の映像を見せる例もあるそうだ

 ▼一方、パートナー男性の喫煙率も6割超で、こちらは受動喫煙が心配だ。多くの有害物質を吸い込み、直接喫煙より危険だと指摘される
 ▼地球規模の受動喫煙とも言えるのが、中国の大気汚染だ。車の排ガスや石炭暖房などから出る「PM2・5」という微小な汚染物質は、髪の毛の40分の1の直径2・5マイクロメートル。市販のマスクだと擦り抜けて肺に入ってくるから怖い
 ▼既に日本にも飛来していて、福岡では基準値超えを数回記録した。九州大学応用力学研究所のホームページ「SPRINTARS」は飛来予測を毎日更新し、閲覧者が急増している。沖縄も1週間先まで「やや多い」が続き要注意だ
 ▼半世紀前、高度経済成長期の日本でも、四日市ぜんそくや水俣病などの公害が大きな社会問題になった。環境庁が発足し、排ガスや排水が厳しく規制され、企業も技術革新に取り組み始めた
 ▼今や世界2位の経済大国・中国。周辺国を脅かす「越境汚染」への対応は歯がゆいほど鈍い。国境ごとの分煙はできない。“エコー検査”などなくても、この星が苦しんでいるのは重々分かるはずだ。