<金口木舌>イチゴに詰まった発想、行動力


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 プロ野球キャンプも中盤を迎え各地とも例年通りのにぎわいを見せている。見慣れた光景の中で、一つおやっと思うことがあった

▼各自治体から球団への差し入れで、名護市は定番のアグー、タンカンに加え「イチゴ」「ひげにんにく」を贈った。名護でイチゴ? ニンニク? と思うかもしれないが、新顔ながら立派な特産品だ
▼作るのは沖坤という企業。本業はコンクリート2次製品、建築用内外装資材の製造だが2年前から農業に参入した。育て、加工し、販売する、6次産業を実践している
▼市内の催しでひげにんにくの天ぷらを食べたが、葉も一緒に食べられ、臭みはなくあっさりしていた。イチゴも洋菓子店と連携し、スイーツにも変身する。来週から始まるイチゴ狩りは既に週末の予約が埋まっているという
▼畑違いの農業参入の背景には、建設不況がある。名護でも2000年の沖縄サミット後は公共工事が減った。市内の経営者から「名護ではモノを運ぶダンプが減った」と不況を実感させる声を聞くこともある
▼ただコンクリートに頼る事業は既に飽和状態という意見もある。工事が少ない、モノが売れないと嘆くよりも、売れるものを新たに作り出し、名物にしようという気概を沖坤の挑戦に感じる。もうすぐイチゴも食べごろ。味だけでなく小さな実に込められた発想と行動力も受け止めたい。