<金口木舌>いじめはなくせるか


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 「クラス全員にシカト(無視)され、机に『死ね、臭い』などと書かれた。みみず腫れになるほどほうきで殴られた」。10年前に取材したシンポジウムで、Nさんが壮絶ないじめ体験を語った

▼彼女の足にはシャープペンを突き立てられた跡がほくろのように黒く残っていた。何度も包丁を手首に当て、風邪薬を大量に飲んだという。美容師としての当時の明るい仕事ぶりからは「自殺未遂」をまったく想像できなかった
▼1996年に東京でいじめによる自殺が公になって以来、いじめはたえず大きな社会問題であり続けた。しかし、いまだ抜本解決に至っていない。大人はいったい何をしてきたのだろう
▼過日、大手出版社とうるま市のアミークス国際学園が開いたシンポに招かれた小森美登里さんは、15歳の娘をいじめを苦にした自殺で失った。今はNPOを立ち上げ、いじめ問題に取り組む
▼「いじめはなくならないのか」の問いに小森さんは言った。「大人は子どもに夢を持てって言う。それならば大人も『いじめはなくせる』という夢を持つべきだ。そうでないと問題は解決しない」
▼一昨年の中2男子の自殺を受け、大津市議会は19日、子どものいじめ防止条例を可決した。条例をしっかり機能させ、いじめの芽を着実に摘み取りたい。苦しむ子ども、悲しむ親をこれ以上増やさない-。まず大人が信念を貫こう。