<金口木舌>「新石垣」7日開港


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 小学生の男の子はたった一人、那覇空港に降り立った。20年以上前のことだ。夏休みを父の実家の今帰仁村で過ごすために毎年、ロサンゼルスから飛行機を乗り継いで来た。空港は大好きな祖母に迎えられ、ほっとした記憶のある場所だった。

 ▼その子は長じて世界的なマジシャン、Cyril(セロ)になった。今は仕事で世界の空港を渡り歩く彼の、旅の原点はあの古い那覇空港ビルディングといえるだろう
 ▼異国の地に降り立った時、最初に実感するのは空港に漂う風情だ。香辛料や植物の香り、身を包むような湿り気、耳慣れない言葉のざわめき。空港も観光資源の一つだ
 ▼長崎ではカステラ型のベンチを置く。宮古は島言葉で「タンディガータンディ(ありがとう)」とアナウンスする。地元温泉の足湯ができる空港もある。お国柄の表された空港に思わずにっこりしてしまう
 ▼事業着手から37年、新石垣空港が7日に開港する。自然保護と開発の間で揺れ動いた歳月だったが、何とか沖縄の自然環境の素晴らしさを世界に認めさせると同時に、公共事業に住民の意見を反映させた事例となったのではないか
 ▼島国沖縄にとって空港は世界との結節点だ。新空港も人と人を結び、八重山への愛着を感じさせる場所となろう。世界が広がり、人も物の行く先も遠く伸びる。末永く愛される空港になってほしい。