<金口木舌>難病を考える日


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 毎月心待ちにする冊子がある。難病支援活動に取り組む認定NPO法人アンビシャスの会報だ。表紙を飾るのは、難病患者の笑顔。当事者が実名と顔を出す例は珍しく、全国の患者会から注目されている

 ▼「病気に縛られず、現状を受け入れ自分を輝かせて生きたい」「病気になったことも無駄な人生ではなかった」。聞いたこともない名前の病気と向き合ってきた体験談は毎回胸に響く
 ▼自身もクローン病を抱える副理事長の照喜名通さんはこう語る。「正体も知らない病気と闘う難病患者は、他に同じ患者がいないため、なぜ自分だけ、という疎外感を持つことが多い」。悩みを共有できる仲間の存在は重要だ
 ▼難病は6千とも8千ともいわれるが、国が認めるのは130疾患。このうちパーキンソン病など56の特定疾患については公的助成があるものの、残りの難病は長い間、福祉の網の目から漏れていた
 ▼しかしようやく制度が見直され、4月からの法改正で130疾患が福祉サービスの対象となる。難病患者にとっては「大転換の年」だが、むしろ抜本的な対策強化はこれからだ
 ▼きょうは「世界希少・難治性疾患の日」。県庁でパネル展を開く照喜名さんは「一人じゃないよと伝えたい。孤立せず、つながるきっかけにしてほしい」と語る。難病に悩む人たちに私たちも思いを寄せたい。病は決して人ごとではない。