<金口木舌>沖縄のチンダミ力


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 沖縄市内の料理店で開かれた台湾文化を知る交流会で二胡の演奏を初めて聞いた。この楽器を見るのも初めて。三線と同様、胴にはヘビ皮、棹(さお)にコクタンやシタンを使っているという

 ▼沖縄民謡歌手と二胡奏者の共演も楽しかった。二種の楽器が奏でる調べに耳を澄ましているうちに、海の向こうに誘われたり、沖縄へと引き戻されたりという不思議な感覚に浸った
 ▼演奏前、二人の演者が互いに目配せしながら調弦を重ねていたのが気になった。同じ素材を使った、いとこ同士のような楽器でも音域が違うため、そのままでは共演できない。そこでチンダミ(調弦)が必要となる
 ▼ならば三線と一緒にエレキギターやキーボードという現代楽器を使用する最近の沖縄民謡はどのようなチンダミを施すのだろう。工工四や音符を読めない音楽音痴には至難の技に思える
 ▼約80年前、バイオリンやマンドリンという西洋楽器を沖縄民謡に取り入れたのは旧越来村出身の普久原朝喜。パイオニアにして現代沖縄民謡の祖は、音楽的素養に裏打ちされたチンダミ力の持ち主だったのだろう
 ▼沖縄のチンダミ力を別の形で生かすことができないかと夢想してみる。持論を押し付けず、相手を見据え、譲り合いことで一致点を見いだしていく。尖閣などの領土問題も、粘り強いチンダミでしか国同士の不協和音を静めるしかないように思う。