<金口木舌>親を亡くした子どもたちへ


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 ひなまつりの日の悲劇はあまりに切ない。暴風雪となった北海道で、漁師の岡田幹男さん(53)と娘の夏音さん(9)が雪の中から見つかった。車が立ち往生し、友人宅に助けを求めて外に出たようだ。父は10時間以上も娘を体温で温め、覆いかぶさって凍死した

▼岡田さんは2年前に妻を亡くした。母を失った一人娘がふびんだったようだ。報道によると漁の帰りに児童館に迎えに行くのが日課の、子煩悩な父親。娘の成長を願う節句も2人で祝う予定だったらしい。夏音さんの生存が救いだ
▼以前、親を失った子どもを支える民間団体、あしなが育英会でボランティアをする大学生に話を聞いた。彼女は父親を亡くして数年後に強い無力感にとらわれた▼いま考えるとPTSD(心的外傷後ストレス障害)。しかし理由が分からず苦しんだ。同じ境遇の仲間と話し合うことで徐々に自分を取り戻した
▼東日本大震災から間もなく2年になる。震災で親を亡くした子どもは2千人を超える。中にはわが身を賭した親の愛に命を守られた子もいる。心の傷を癒やすにはまだまだ短い歳月だ。長い長い心のケアが必要とされる
▼絆を奪った自然の猛威を恨みたくなる。震災や豪雪の中、つらく重苦しい境遇を乗り越えなければならない子どもたち。深い親の愛が、すべての災害遺児の人生の糧になることを祈るばかりだ。