<金口木舌> バスは食わず嫌い?


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 好き嫌いはそれほどないつもりが、子どものころ、納豆だけは苦手だった。あの臭いからして駄目。家族が納豆パックを開封しただけで食卓を離れた。克服したのは40歳を過ぎて東京で暮らした3年間

 ▼都会での独り暮らしは食生活が大切だと思い、恐る恐る納豆に挑んだ。おや、結構いけるじゃないか。それからは野沢菜や大根おろしを入れるなど、自己流のレシピに凝った。単なる食わず嫌いだった
 ▼日常生活の中でも食わず嫌いが大損を招いていることがある。価値や面白さに気付かないまま遠ざけている物事の中に予期せぬ魅力が潜んでいるかもしれない。納豆のように
 ▼バスは「食わず嫌いされる乗り物」という話を聞いた。3日、宜野湾市であった路線バス普及イベント「わったーバス党・党大会」でのこと。では路線バスの真価とは何かというと「乗ってみたら結構便利だ」という単純な話
 ▼それでも乗客数が伸びないのは「不便」という先入観や、どこに行くのか分からないという「不安」が根強いため。それを払拭(ふっしょく)するのが路線図の普及や沿線の施設と連携した商品開発。レシピが必要なわけだ
 ▼まずは食わず嫌いをやめ、短区間でもバスに乗ってみてはどうか。車窓からは今まで見たことのない風景が広がる。うまく乗りこなせば、自家用車の運転にはない気楽さに浸ることができるはずだ。