<金口木舌>被災者との向き合い方


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 東日本大震災から2年がたった。「被災者のために、被災地のために何かできることはないか」。それは今も、多くの県民、国民の思いだろう

 ▼何かをするにしても、被災者の立場を最大限尊重するという姿勢が大事だ。「~してあげる」などという上から目線の考え方は論外だ。「勇気を与えたい」「元気を与えたい」という姿勢も不遜かもしれない
 ▼日本サッカー協会の特任コーチを務めた加藤久さんは、宮城県出身で、個人としても復興支援活動に取り組んできた。加藤さんは本紙連載「サッカーの力」の中で「寄り添いながら、被災者の皆さんから何か言ってくるまで待つことにしたのです」とつづっている
 ▼少し話はそれるが、センバツ高校野球が22日に幕を開ける。2年前、センバツ開催が危ぶまれたとき、元共同通信社編集委員の万代隆さんがコラムに引用した、被災女性の言葉が、今も強く印象に残っている
 ▼「私たちは他人の幸せや喜びをねたむほど落ちぶれてはいない。皆さんどうぞ、我慢せずに楽しいときは笑い、うれしいときは喜んでください。私たちも一日も早く皆さんに追い付きます」
 ▼義務感や使命感が先行しがちだが、自然な形で「寄り添う」「じっくり聞く・待つ」ことも肝要だろう。何から手を付けていいか分からなかった被災者も必ず立ち上がる、大地を一歩ずつ歩み始める、と信じて。