<金口木舌>節目の記憶どうつなぐ


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 平成生まれの新入社員に驚いたのはつい3、4年前。今年で沖縄戦終結から68年、日本復帰から41年、「昭和は遠くなりにけり」だ

▼次の数字にも時代の移ろいを感じる。2010年に実施された県内高校生アンケートで復帰の年と月日を聞くと、正答率はそれぞれ11・4%と14・3%「分からない」は約60%に上った
▼サンフランシスコ講和条約発効の日「4・28」は設問にないが、復帰への回答から推測すれば認知度は同じか。苦難の時代を生きた戦後世代は「4・28」を日本の独立と引き換えに沖縄が切り離された「屈辱の日」と語り継いできたが、風化している可能性がある
▼歴史教育者協議会(東京)に聞くと高校歴史教科書も「主権回復」が主で沖縄切り捨ての記述は一言だけ。インターネット掲示板では、県内の20代、40代と名乗る人の「『屈辱の日』なんて聞いたことない」との書き込みもある
▼4・28が主権回復した記念すべき日か、異民族支配を国家が是認した屈辱の日か、意見はそれぞれあっていい。ただ現実に目を背け、歴史の一面だけを見て「お祝い」するのは乱暴だろう
▼首相は「主権を失っていたことを知らない若い人が増えている」と述べた。歴史を風化させたくないのなら、沖縄には4・28のほかにも5・15、6・23と歴史の節目が幾つもある。次世代に正しく学ぶ機会を。大人の責任をかみしめたい。