<金口木舌>ゆいまーるの価値


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 県内に伝わる相互扶助の習慣「ゆいまーる」が挑戦する脳を育み、沖縄の可能性を象徴する源だという。脳科学者茂木健一郎さんの言葉だ

▼茂木さんによると人間の脳は何歳でも変わり得るが、一人での挑戦には限界がある。周囲との絆という安全な場所があり、新しいことができる。ゆいまーるにも脳を刺激する“底力”があるようだ
▼茂木さんは絆の裏側にある「協働」の精神についても、沖縄はその価値を知らせてくれる地域と指摘。過日、県内で講演し世界のウチナーンチュ大会を世界に発信してほしい次代のネットワークと期待した
▼絆や協働は、人を思いやり、尊重する心から生まれるものだろう。世界的な情報産業の拠点、米シリコン・バレーでも各国の仲間の輪がベンチャーを支えているという。ゆいまーるは、その気になればどこでも活用が可能なのかも知れない
▼ゆいまーるの文化に誇りを持ち、経済や平和に関する取り組みで大いにアピールしてもいいのではないか。潜在的なパワーがある一方で、沖縄は基地から派生する諸問題で県民は重い十字架を背負わされているよう
▼過重負担を押しつけるこの国の「構造的差別」に県民の苦悩は深い。口先だけの「沖縄理解」では改善できまい。為政者にゆいまーるなど沖縄文化の根源的理解を期待したいが、それはないものねだりだろうか。